


The 8th Meeting of
Japan Orthoptic Vision Society

Zoom Webinars 開場
開会挨拶
18:30 ~
岩田 遥
(北里大学)
19:00 ~ 19:05
講演Ⅰ
光波長制御を正しく知る
- 視能訓練士が押さえるべき効果と限界 -
・わかりやすい眼光学~波長を味方にするレンズ選択編~
川守田 拓志
(北里大学)
19:05 ~ 19:40
・光の波長特性に基づく見え方の最適化を探る
-波長制御レンズの可能性-
飯塚 達也
(交通安全環境研究所)
講演Ⅱ
“意外と知らない” 視能訓練士のトリビア ~臨床の質を上げる小さな発見~
19:45 ~ 20:15
司会:荒木 俊介
(川崎医療福祉大学)
中塚 秀司
(刈谷豊田総合病院)
演者:佐々木 翔
(帝京大学)
高橋慎也
(小沢眼科内科病院)
多々良 俊哉
(新潟医療福祉大学)
講演Ⅲ
シンプルだけど奥が深い''自覚的屈折検査''
- 日常臨床と研究データから読み解くコツと落とし穴 -
岩田 遥
(北里大学)
20:20 ~ 20:40
Webセミナー
デジタル時代の乱視矯正を考える
半田 知也
(北里大学)
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
20:45 ~ 21:15
閉会挨拶
ご挨拶
この度、第8回日本両眼視矯正研究会(JOVS)はZoom Webinarsにてオンライン開催をいたします。今回は視能矯正に関わる基礎と臨床、研究と実践を横断し、現場での意思決定に資する知見を共有する場として企画しました。演者は配信スタジオよりお送りします。
まず講演Ⅰ「光波長制御を正しく知る—視能訓練士が押さえるべき効果と限界—」では、遮光眼鏡から眼内レンズ・コンタクトレンズに至るまで、分光特性やMTFといった光学指標を臨床判断へ結びつける視点を整理します。疾患特性や眩しさとの関連、ブルーライトカットやバイオレットライト透過設計が色覚・暗所視・概日リズムに及ぼす影響まで、エビデンスの到達点と課題を俯瞰し、波長を“味方にする”レンズ選択の考え方を共有します。加えて、夜間運転におけるグレア低減と視機能のトレードオフ、照明環境とコントラストの組み合わせによる“見やすさ”の変動など、波長制御レンズの可能性と限界を実装レベルで検討します。
続く講演Ⅱ「“意外と知らない”視能訓練士のトリビア—臨床の質を上げる小さな発見—」では、検査効率や再現性を高める“小さな工夫”を、エビデンスと紐づけて共有します。ルーチンに潜む思わぬ落とし穴、わずかな条件差がもたらす結果解釈の揺らぎなど、明日からの現場で即応用できる実践的ヒントを持ち帰っていただけるはずです。
講演Ⅲ「シンプルだけど奥が深い“自覚的屈折検査”」では、フローチャート化できる手順の奥にある生理学・光学の要点を、臨床事例と研究データから読み解きます。過矯正回避の勘所、雲霧量設定、乱視度数決定の落とし穴、5m/3m視力検査における調節介入など、検査の精度と納得感を両立させる思考プロセスを提示します。
最後の共催セミナー「デジタル時代の乱視矯正」では、Digital Eye Strain(DES)に関連する視機能・涙液安定性・屈折矯正のあり方を整理し、デジタルライフに最適化された乱視用コンタクトレンズ技術の最新動向を概観します。スクリーンタイムの長期化が前提となる今、患者さんのQOLを守る処方・指導のアップデートを議論します。
本研究会が、光学と生理、デバイスと測定、データと臨床判断を統合し、両眼視矯正の実装力を一段引き上げる契機となれば幸いです。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
岩田 遥
(北里大学)
2014年 北里大学 医療衛生学部 卒業
2017年 北里大学 医療衛生学部 助教
2019年 北里大学大学院 医療系研究科
修了 (医学博士)
2022年 北里大学 医療衛生学部 講師

講演Ⅰ
光波長制御を正しく知る ー視能訓練士が押さえるべき効果と限界ー
光は、ただ明るさを与えるだけの存在ではありません。私たちの「見え方」や「心地よさ」、さらには生活の質まで左右する奥深い性質をもっています。波長制御レンズは、その光の中から特定の波長を選んで通したり抑えたりすることで、医療用遮光眼鏡、日常の色付き眼鏡、ブルーライト対策製品、さらには眼内レンズやコンタクトレンズに至るまで、幅広い分野で活用が進んでいます。本講演では、この光との付き合い方を、現場で役立つ視点からわかりやすく整理します。
まず、遮光眼鏡について、疾患特性や眩しさとの関連を踏まえながら、波長制御がどのような視覚的効果をもたらすと報告されているかを、既存の研究と光学的原理から読み解きます。続いて、眼内レンズにおけるブルーライトカットやバイオレットライト透過設計が、色覚・暗所視・概日リズムにどのような影響を示すとされているのかを整理し、エビデンスの到達点と課題を紹介します。さらに、最新のカラーレンズやコーティング、着色レンズなど近年注目される製品群について、その背景にある光学的発想と科学的根拠を、分光データや視覚評価の読み解き方とともに検討します。
最後に、分光特性・MTF・PSFといった光学指標を、どのように臨床判断へ結びつけるかを整理し、用途や個人特性に応じたレンズ選択の考え方を共有します。光への理解が深まることで、日々の現場で皆様が行われている見え方の支援に、さらに選択肢や考え方が加わるきっかけとなれば幸いです。
わかりやすい眼光学 ~波長を味方にするレンズ選択編~

川守田 拓志
(北里大学)
2003年 北里大学医療衛生学部 卒業
2006年 University of Arizona, Ophthalmology and Vision Science, Visiting scholar
2008年 北里大学大学院医療系研究科眼科学(博士課程)修了
2008年 北里大学医療衛生学部 助教
2011年 北里大学医療衛生学部 専任講師
2016年 北里大学医療衛生学部 准教授
2025年 北里大学医療衛生学部 教授
光の波長特性に基づく見え方の最適化を探る ─ 波長制御レンズの可能性─
私たちの「見え方」は、光の波長、すなわち色の成分によって大きく影響を受けます。波長制御レンズは、特定の波長を選択的に透過・遮断することで、見やすさやまぶしさを調整する機能性の着色レンズです。色の異なるレンズにはそれぞれ独自の分光透過特性があり、「どの色が最も優れているか」を一概に決めることはできません。明所・暗所といった照明環境、視対象と背景のコントラストの組み合わせによって、見やすさが変わるためです。
また、短波長の光はまぶしさに関与することが知られています。特に、夜間運転時には、対向車の前照灯によるグレアは日常的に経験され、黄色レンズなどブルーライトカット効果をもつドライビンググラスが注目されてきました。しかし、グレア低減と視機能の維持はしばしばトレードオフの関係にあり、その効果は単純ではありません。さらに、短波長の光はパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器からも発せられ、概日リズムへの影響が議論されています。
本講演では、波長制御と視機能、グレアおよび照明環境との関係について、実験的知見や既報研究をもとに概説します。

飯塚 達也
(交通安全環境研究所)
2019年 帝京大学医療技術学部 視能矯正学科 卒業
2022年 北里大学大学院医療系研究科 医科学専攻 修了
2025年 北里大学大学院医療系研究科 医学専攻 修了
2025年 独立行政法人自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 研究員
講演Ⅱ
“意外と知らない” 視能訓練士のトリビア ~臨床の質を上げる小さな発見~
日常臨床には、明確な理論や手順として語られることは少ないものの、知っているだけで検査の精度向上や業務効率化につながる“小さな知識や工夫(トリビア)”が数多く存在する。本セッションでは、経験豊富な 3 名の演者に、それぞれの得意領域から臨床に役立つトリビアを順に紹介していただく。
取り上げる内容は、ルーチンワークに潜む思わぬ落とし穴、わずかな条件の違いで変化する検査結果の解釈、小さな工夫がもたらす検査効率の向上など、いずれも思わず “へぇ” と感じる軽快な話題でありながら、エビデンスを紐づけることで、単なる雑学ではなく「臨床の質を上げる小さな発見」として共有したい。
本企画が、日々の臨床に新たな視点と小さな気づきをもたらし、視能訓練士としての専門性向上に寄与する契機となることを期待する。
・座長
・演者



荒木 俊介
(川崎医療福祉大学)
2010年 川崎医療福祉大学 医療技術学部 卒業
2010年 川崎医科大学附属病院 眼科 入職
2016年 川崎医療福祉大学 非常勤講師 併任
2017年 川崎医療福祉大学大学院 修士課程 修了
2022年 川崎医療福祉大学大学院 博士課程 修了
2023年 川崎医療福祉大学 助教
中塚 秀司
(刈谷豊田総合病院)
2007年 東海医療工学専門学校 卒業
2007年 総合上飯田第一病院 入職
2008年 刈谷豊田総合病院 入職
2019年 北里大学医療衛生学部研究員
2022年 刈谷豊田総合病院 診療技術部眼科担当員
2025年 北里大学大学院 修士課程

佐々木 翔
(帝京大学)
2008年 帝京大学医療技術 卒業
2010年 帝京大学大学院医療技術学研究科 修士課程 修了
2010年 帝京大学医学部附属病院眼科
2014年 帝京大学医療技術学部視能矯正学科 助教
2019年 帝京大学医療技術学部視能矯正学科 講師
2021年 株式会社スクエアウィール 代表取締役社長
2021年 帝京大学大学院医療技術学研究科 博士号取得
2025年 帝京大学医療技術学部視能矯正学科 准教授
髙橋 慎也
(小沢眼科内科病院)
2007年 大分視能訓練士専門学校 卒業
2007年 林眼科病院 入職
2016年 九州保健福祉大学 修士課程 修了
2019年 出田眼科病院 入職
2020年 小沢眼科内科病院 入職
2025年 帝京大学大学院 後期博士課程入学

多々良 俊哉
(新潟医療福祉大学)
2015年 北里大学 医療衛生学部 卒業
2015年 藤枝市立総合病院 入職
2017年 新潟医療福祉大学 医療技術学部 助手
2018年 長岡寺島眼科クリニック 非常勤職員
2020年 新潟医療福祉大学大学院 修士課程 修了
2020年 新潟医療福祉大学 医療技術学部 助教
2024年 北里大学大学院 博士課程 修了
2025年 新潟医療福祉大学 医療技術学部 講師
講演Ⅲ
シンプルだけど奥が深い''自覚的屈折検査''
- 日常臨床と研究データから読み解くコツと落とし穴 -
自覚的屈折検査は、視能訓練士にとって最も身近で、ほぼ毎日行う基本的な検査です。一見シンプルでフローチャート化もできる手順ですが、実際にやればやるほど「こんなに奥が深い検査だったのか」と感じさせられ、教科書どおりに進めているつもりでも、どうも腑に落ちない場面を経験されている方も多いのではないでしょうか。
本講演では、そうした日常臨床の中で生まれた素朴なモヤモヤを題材に、自覚的屈折検査の“シンプルだけど奥が深い”一面を、私の研究や既報からご紹介します。たとえば、「乱視眼に対しS面bestにしているはずなのに、乱視表で後焦線側のラインばかり濃く見えるのはなぜか?」 「自覚的屈折検査中に少しの過矯正も怖がる必要があるのか?」「5mや3mの視力検査で調節はどの程度介入しているのか」などといったテーマを取り上げます。これらの疑問を、調節の時間応答や最小錯乱円の考え方と絡めながら、過矯正を避けるコツや、雲霧量・乱視度数決定の落とし穴など、明日からの自覚的屈折検査を“ちょっとアップデート”できる視点としてお話ししたいと思います。

岩田 遥
(北里大学)
2014年 北里大学 医療衛生学部 卒業
2017年 北里大学 医療衛生学部 助教
2019年 北里大学大学院 医療系研究科
修了 (医学博士)
2022年 北里大学 医療衛生学部 講師
共催セミナー
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
デジタル時代の乱視矯正を考える
スマートフォン等のデジタルデバイスの世帯保有率は90%を超えて久しく [1]、成人の平日平均利用時間はスマートフォン約3.5〜4.2時間、パソコン約1.3〜1.4時間、タブレット約0.3〜0.4時間であり、合計すると約5〜6時間/日にも及びます [2]。仕事や学業、趣味はもちろんのこと、家族・友人間のコミュニケーションやショッピング、病院の予約までデジタルデバイスは我々の生活に深く浸透しており、スクリーンタイムの短縮は容易ではありません。
Visual Display Terminal(VDT)症候群やComputer Vision Syndrome(CVS)などデジタルデバイスの使用に伴う眼の疲れや乾きについてはこれまでにも問題視され数多く報告されていますが、近年新たにDigital Eye Strain(DES)という概念が注目されています。DESについてまとめたTear Film & Ocular Surface Society(TFOS)のレポートによると、両眼視機能の不具合や涙液不安定、未矯正の乱視を含む不適切な屈折矯正がその症状悪化の主要因として指摘されています [3]。デジタル化は今後ますます加速すると予想され、とりわけコンタクトレンズ装用者や乱視の未矯正者のQuality of Life(QOL)に大きな影響をもたらす可能性があります。
本セミナーでは北里大学の半田知也先生から、DESとその緩和策について、さらにデジタルライフに最適化された新しい乱視用コンタクトレンズのテクノロジーについて解説いただきます。デジタル時代の患者さんに最適な屈折矯正とはどのようなものか、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
1: 総務省「令和6年(2025)通信利用動向調査の結果」(2025年5月30日)
2: 総務省 情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2025年6月27日)
3: Wolffsohn JS et al., "TFOS Lifestyle: Impact of the digital environment on the ocular surface." Ocul Surf. 2023;28:213–252. DOI:10.1016/j.jtos.2023.04.004
座長:岩田 遥
演者

半田 知也
(北里大学)
1998年 川崎医療福祉大学
医療技術学部 卒業
2004年 北里大学大学院 医療系研究科 修了(博士医学)
2004年 北里大学 医療衛生学部 助手
2005年 北里大学 医療衛生学部 講師
2013年 北里大学 医療衛生学部 准教授
2016年 北里大学 医療衛生学部 教授
